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クラシカルでゴシックな雰囲気を持ったバンドとしてカルトな人気を誇ったショコラータを解散した後、九一年にソロデビューしてからは順調にアルバムを発表し続けたかの香織だったが、数年前からは、完全に自分のペースで活動をするようになった。
「自分が表現したい音ができました、って泣いてしまうようなテンションで作ったものがまとまった時に出せればいいな、って思うようになったんです。そのために自宅にスタジオを作って、自分でプログラミングをするようになった」
音楽産業というシステムから一歩身を引いてみる。しかし、流れから大きく外れるわけではない。
「絶えず外界の刺激を受けながら、自分が単体である、ってことは選んでいきたいですね。大きな流れに呑み込まれないようにして、自分が良いと思ったことはやって、それが何の意味を成すのかはその後に考えようって思ってます」
そうして生まれたのが、昨年発売になったセルフカバーアルバム『C』(ツェー)。これまでの代表曲に新曲を加え、ゆったりとしたアレンジが与えられた。
「やっと見つけた大好きな自分が作るもの、それも余り人を介在させないで手作りでやるのってどんなかな、と思って作ったアルバム。今のムードはギリギリの音程で歌うっていうよりも、もっと緩い感じ。物語を落ち着いて読むみたいな感じで作りました」
発売されたばかりの最新マキシシングル「Believer」には、スティーヴィー・ワンダー作詞作曲の世界未発表レコーディング曲「Lead of the sun」が収録されている。
「楽曲を管理している会社でこの曲に出会い、ラブコールをしたんです。キラキラした名曲をどうしても歌いたいって。いろいろ苦労はしましたけど、それが縁でスティーヴィーが来日した時に一緒に演奏できたことが切っ掛けとなって、ロスに行った時に「阿佐緒」を彼の自宅に届けたんです。日本酒は好きだと言ってましたから、今頃は彼のセラーに入っているはずですよ」
純和風の環境に育ったがゆえにパリやロンドン、ニューヨークでの生活が長かった彼女が、ある日を境にその視線をアジアに向けた。そして、今、その意識の中心は日本にある。彼女が子供の頃、遊び場にしていた酒蔵。そこに漂っていた微粒子のようなものが常に彼女の中にあったのだという。
「最初に蔵に入る時に蔵人さんに言われたんです。『蔵は和ですから』って。人のことを悪く言ったりして悪い空気を作ってしまったら、お酒に聞こえちゃいますからね、と。生ける物と純粋無垢な心で向き合う創造の聖地。『帰ってきたな』って感じがしました」
長い旅を終えて帰ってきたかの香織。彼女もやはり旅人の家系を継ぐものなのだ。
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